北海道８月上旬、何処か４日間どっぷりと満喫できるとこないかねえ、とA氏と会うたび口にする。この季節イトウはいじめたくないしA氏もあまり好きではない。このくそ暑い時くらい爽やかな地で癒されたいよね、でも岩魚で４日間使うとこなんてないよね、あそこの○○○川はどう？○○川とか？といろいろ計画をたてるが、これまでの経験でその気にさせる渓は思いつかない。後残っているのは、別に地名を言ってもかまわないが見れば誰でも分かるので省略。ここしかない！とA氏が提案し計画をたててくれた。たまにはカラフトウグイのイクラ丼でも食べてのんびりしようよ！と、B氏を含めて３人、カラフトマスのメッカとなる北海道最後の秘境、東の果てまで遠路はるばる向かうことになった。
岩魚とイトウでコチコチになっている私の頭に新たな風を吹き込んでくれたA氏。冒険するにあたって時代の最先端を進むA氏は数年前からシーカヤックを始めている。そのA氏が所有する２人乗り用一艘、１人乗り用一艘のカヤックに３泊４日分の食料を詰め込み、テント場まで片道６時間要すると思われる滅多に凪ぎることのないオホーツク海へ出航した。
ある程度の波を覚悟していた我々だったが、願ってもないベタ凪ぎ。これで目的地までは予定以上早く到着することができる。さすが○○だ！別世界にきているような錯覚になる。
岸沿いをクルージングしていると漁師が定置網を回収する場面に遭遇する。まだ見ぬカラフトの姿を期待し漁船に近ずく私とB氏だが、見た目が気の荒そうな男達。私はここで漁師に邪魔だからあっちに行けっ！とか、怒鳴られると思ったが、快くあーだこーだでホッケとカラフトウグイ１匹ずつ頂くことができた。
絶好の行楽日和、今晩のカラフト丼も確実になったことで、海からしか見えない絶景を背景にオヤジなんとかのダジャレを連発するA氏。どのような内容だったか今はもう思い出せない・・・が、なかなかの出来であったことは否定しない。
左が私こと池田で右がB氏。ほんとにここは海なのだろうか？と思うほど穏やかだ。目指すテン場まで後２時間程の航海。平行して進むA氏の口からはイクラ丼、イクラ丼・・・早く食べたいな〜と聞こえてくる。
A氏が我々を撮影する。オールを使うこつがあるらしく、私が漕ぐとどうしても力まかせになり、すぐにばてる。意外と自信があったのだが、どうにもうまくいかない。霧なのかそれとも雲の中に入っているのか、不思議な空間を突き進む。
夕日が沈む頃、予定より２時間以上早く到着。断崖から流れ落ちる滝を前にすばやくキャンプを設営し、静まりかえった海を眺める。ライズがない！当たり前か、川じゃないし、そう簡単に姿が見れる訳がないか？ウェットスーツを着た体がみょうにほてり、A氏が持ってきた水中眼鏡とシュノーケルを付け、泳ぎの下手な私は波打ち際から飛び込む。すると！！！カラフトの群れが目の前で泳いでいる！すぐに立ち上がり、大声でカラフト、カラフト！たいして釣る気のなかった２人はすぐさま仕掛けをセットし、無我夢中で竿を振った。
 
市販されている仕掛けで釣る私とA氏はすぐさまカラフトを釣り上げ大はしゃぎ！
日が沈む寸前、波打ち際に影が射しかかると、見えなかったカラフトの姿が岸沿いで確認でき、口元めがけてユラユラとスプーンで誘う、初日は３人で合計で５匹釣り上げ、イクラ丼とちゃんちゃん焼きと他、豪勢なメニューで退屈することのない夜を過ごした。
 
翌日の朝起きてみるとビックリ！渡し舟で来た釣り人がテン場周りを囲んでいた。前日、岸沿いを命がけでやってきたという男女５人組みと他十数名の団体だけならまだしも、まさか漁船に乗ってやってくるとは・・・ちなみに、暗闇の中男女５人組が最初に現れた時、我々は丁度イクラ丼を食べ終え、ちゃんちゃん焼きを作っている最中だった、まさか傍にきてテント張らないだろうな〜と話していると、女の子２名が命からがらよたつく足でふらふらとこちらへやってき、A氏とB氏に倒れ掛かるようにしてぶつかってきた！おいおい！大丈夫かい？どうしたの生きてるかい？で、その男女５人組みは我々のすぐ傍３ｍと離れていない箇所にテントを張った。周りには沢山テント張る場があるのにな〜？そのリーダーとなる青年に話しを聞くと、自分も青年みたいなものだけど・ここへは何度も来ているようで道には自信があったとか、しかし、途中高巻く箇所を間違え断崖で立ち往生し、遠回りするはめになったと言う。コタコタになっている姿を見て、よかったらこれ食べる？とカラフトウグイを見せると、いえ！途中漁師からもらったのがあるのでけっこうです。あ〜それじゃいいね！と言うと、あの〜フライパンが無いので出来ればそれを貸して欲しいんですけど〜、我々は＿＿＿。
朝来た時の海岸は我々だけの海だったはずなのに、日が沈んだ今では何人ものキャンパーがどんちゃん騒ぎをしている。そして翌朝になると海岸を埋め尽くすほど押し寄せた釣り人の数。毛ばりマンにカラフトウグイがヒットするや、ふっ〜！だの、ひゅ〜！だの、うわっほう〜！みたいなことを発して大騒ぎしているし？秘境は秘境だが・・・
 水平線に映る望郷の地。綺麗に写っているこれらの写真は全てA氏が撮影したものです。
これまで源流の岩魚、原野のイトウ、これらを主体に多くの時間を要してきましたがカラフト・・・とは言え、これほどの光景が見れる箇所は、もうここにしかないでしょう。来年から半島へ入る規制も厳しくなるとのことで、これが最後の旅になるかもしれない。
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灯台の上から望む半島の先端
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