木漏れ日に照らされる大きな影

魔の底流へ　　　　初日の晩はゴルジュで

※注意、ネットの上に岩魚をおいていますが、数枚シャッターを押した後、流れへと返しています。

大きな勲章を手にした喜びに浸る中橋さん。深く切れ込んだ暗い谷間を遡行すること４時間、大岩魚と出会う嬉しさは何、釣り自体はご褒美、それぞれが歩む人生のように、危険を冒して突き進む先の空間で五感を研ぎ澄ませ、美味い飯と僅かな岩魚に与り星空を眺めて野宿を完結させる。

クリアでかつ深い緑色となる流れとは異なり、木漏れ日から射し込む光に照らされる棲家は神秘な空間に見えた。大きな石が三つ並び、その間には電柱ほどの太さがある流木が横たわり、透明度の高い青緑色に輝く水面に2匹の大きな影が石の側で揺らめいている。

今回は手竿をしか携帯しない私が最初に餌を投ずると、すぐに針を咥えたが頭を数回振った後、仕掛けが天上の枝に絡んで私は竿をたたんだ。それより５０ｍほど下流で毛鉤を打つ中橋さんに合図を送り「ココニオオイワナガイル」と手で報せる。

急いで仕掛けを作り直したが間に合わず、問題の大岩魚が定位する箇所を中橋さんに目で知らせると、遡行で疲れていた瞳孔が全開・・・その大ものが居る箇所の上流へと毛鉤を何度か落とすが、なかなか針を咥えず、私は次の場所へと移ろうと一つ上のポイントへ向かうと、背後から大きな声が上がった。

近頃パラダイス症候群に陥っている中橋さん。北海道の隠源へと訪れる者は数少ない・・・さすがに命がけの遡行なだけ手にする幸せは格別だ。

三つ口となっている岩魚の口。北海道の谷では最近よく見られる頭デッカチの寸ずまり。その多くは、もうこれ以上大きくなれないのだろうか？

釣られたショックは大きかったようだが、こんな大きな岩魚を掛けたのは初めてですと、今も足の震えが治まらないと言う中橋さん。これは一生の想いでになるだろう・・・

数枚の写真を撮った後、岩魚はもと居た場所へと帰っていった。この隠源にはしばらく来ないが、また再び大きな岩魚と対面できるよう夢を未来に託す・・・カエルの子はカエル、大きな岩魚からは大きな岩魚の子が生まれる・・・

魔の底流へ　　　　初日の晩はゴルジュで