大蛇行する源へ行く

北海道の森に現れる春のイトウ。幻の魚と呼ばれる域に達している１．３ｍはあろう姿を求め、残雪の多い森の中を林道を交えて進む中、たとえそれが歩きであっても困難な道のり、雪崩により土砂が崩れた箇所に遭遇したりと、予想を上回る試練に我らは手こずった。

中流でイトウが足止めされる某落差では数十匹、いや百匹にも達するものたちが既に上り詰め、地元の釣り人も嗅ぎ付けたようで、多くの人達が「集り」１人十数匹は釣り上げているとか・・・そんな話を地元の友人から聞いていた私は、この先遭遇する大物との出会いに期待を寄せていた。

朝７時に出発してから時計を見ると１１時を過ぎていた。何度も尾根を折り返した先で、ようやく本流と支流とが合流する分岐点に指しかかる。上記の画像は支流、あまりにも川が大きい。たとえ支流とはいえ、産卵が行われる源までは今回、行けそうもないと弱気になった。

大蛇行する源でようやくイトウのペア

支流を上り詰めてまもなくしてイトウのペアを発見した。入っているぞ、来ている。濁りの強い流れの中で真っ赤に染まる雄と濁った色模様の雌が源を目指している場面を目視。

その後、昼食を摂るｌことを忘れてひた歩き、産卵しているでだろう流域へと辿り着く。左の画像、根元に立つのが中橋さん。所々に、このような巨木が大きく枝を張り出してはいるが、あまりにも伐採が大規模に行われているようで、幾つかの山を隔てた向こうにある聖地とは、一見して状況が異なるように覗える。

はたして巨大イトウは姿を見せてくれるだろうか。森の傷跡があまりにも痛々しい、隣の川ではもはや産卵が終えようとしているのに、ここでは寂しく水が流れるだけで、岸際を覆い尽くす笹の密度も薄く、川幅が広い割には浅瀬が延々とつづいている。

支流を登り始めて直ぐに確認したイトウのペアを最後に、その後は一匹たりとも、それらの姿を見ることは出来なかった。

何も・無い・春で〜す〜襟〜裳の〜春は〜・・・と、頭の中で歌詞が流れる。時期尚早と言うべきか、それとも本線となる上流は壊滅的なのか、今回だけでは答えが出ないが、その歌詞と重なるほど、あまりにも残酷な森の姿であった・・・来年へと続く・・・

ご苦労様でした中橋さん。期待とは裏腹な成果で幕を閉じたことが、なんとも申し訳ない。幸いにして２匹のイトウは見れましたよ。車止めに戻った瞬間、残雪の上に倒れる中橋さんだった。